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『グラスホッパー』

『グラスホッパー』という本を読みました。
平たく言うと、群像劇の小説です。
もう少しいうと、「押し屋」という、人を交通事故に見せかけて殺す殺し屋の居場所を探して
何人もの殺し屋が様々に絡み合う話です。
こう書くとかなり物騒な小説のようですが、
メインアイデアとして描かれているのは、バッタが大量発生して群れになったとき、
その集団は凶暴で残忍になりやすい、という傾向があって、
それは人間にも当てはまるのではないか、ということです。

その考えに賛成すると共に、そういう傾向があるということを知っているだけで、
どれだけ賢くなれるか知れないと思います。
人はだいたいの場合何らかの群れの中の一人でありますが、
その自分のいる群れをちょっと離れた視点から見るということも必要です。
自分が身をおいている方向は、そのバッタと同じになりかけているのではないか、
これはまずいね、と思えるだけで誰もが同じ一方向になだれ込むということにはなりにくくなる。

伊坂氏はそれをうまく作品に埋め込んでいると思います。
しかも簡単でいて、あからさまでない。
そして何より、そんな見方によっては恐ろしい傾向を滑稽に描いて、
笑い飛ばせてしまう所がいちばん良い所だと思います。
スタンピードする登場人物たちを見て、「自分の行為に思慮のない奴は、馬鹿だ」なんて
どこぞのKみたいに思えたら、それだけでひとつ賢くなっていると思うのです。
軍団バッタにならないためには、何かを行為する自分のほかに、
その自分を上から見つめる自分を持っている事が必要だということです。

しかしながら、この作品に限らず、
同氏の小説に登場する人間のほとんどはすごく頭がいい。
小説の引用で会話をしたりするし、思いつめたりせず、機転もきく。
でもやってる事は割りに愚かだったりして、好ましい。
そういう人たちは、おそらくバッタにはならないだろうなとも思いました。



伊坂幸太郎 『グラスホッパー』(角川文庫)
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by fukidamarism | 2007-07-02 20:07